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HSPは病気ではない、「気質」です
HSPは疲れやすく、周囲の刺激に過敏に反応してしまいます。
人とは違う感覚の持ち主であることから、自分のことを病気なのでは?と思ってしまうかもしれません。
中には精神科の診断を受けた人もいるのではないでしょうか?
これまでも述べてきましたが、HSPは「気質」であって病気や障害ではありません。
よく混同されていますが、発達障害や精神疾患、アスペルガー症候群(ASD)でもありません。
その人の生まれもった気質なので、治したり変えたりするものではありません。
ただ、HSPの特徴と発達障害などの症状が似ている部分があるため、誤解されていることが多いようです。
※HSPであり、発達障害でもある可能性もあります。
発達障害とは
発達障害とは主に次の3タイプに分類されます。
①自閉症スペクトラム(ASD)
対人関係・社会性とコミュニケーション能力に困難があり、興味や関心の幅が狭く物事に強いこだわりがあり、柔軟な思考や変化への対処が難しい人もいます。
②ADHA(注意欠陥・多動性障害)
「気が散りやすい」「集中力がない」「忘れっぽい」「落ち着きがない」「思いつきで行動してしまう」など年齢に見合わない不注意、多動性、衝動性によって学業や日常生活に支障が出てしまいます。
感情や行動のコントロールをするのが自分では難しいため、周囲から批難を受けてしまいがちです。
③学習障害(LD)
知的発達に遅れは大きくないはずが、読む・書く・話す・聞く・計算など特定の行動が困難になることが見受けられます。
読めるけれど書くことが苦手、算数など特定の科目が理解できないなど偏りが見られることが多いです。
~臨床福祉専門学校HPより引用~
ここでは特に混同されやすい、発達障害の
①自閉症スペクトラム(ASD)
②ADHA(注意欠陥・多動性障害)と、
精神疾患の「双極性障害」
を取りあげて説明していきます。
双極性障害は発達障害ではありませんが、医師でも判別が難しいと言われているほど似た症状を持つため、この記事で取り上げました。
※上記のほかにも、トゥレット症候群(チック)や吃音症、発達性協調運動障害なども発達障害の定義にふくまれていますが、この記事ではHSPと混合されやすいものに限定しているため、省略します。
自閉スペクトラム(ASD)との違い
HSPの持つ敏感さと発達障害が混同されているのは、自閉スペクトラムの人の多くに感覚過敏が見られるためでしょう。
なかでも自閉スペクトラムの人は触覚・聴覚・視覚に過敏に反応するため、この点がHSPと誤解されやすいのです。
どういった状況で過敏に反応してしまうのか、例を挙げてみていきましょう。
自閉スペクトラム(ASD)の場合
触覚 | 人から触られるのが苦手だったり、特定の感触が耐えられない。 シャワーが痛くて浴びられない、衣類のタグやセーターはチクチクするので苦手。 レジでつり銭を受け取ることや美容室で髪を触られるのが苦痛など |
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聴覚 | 特定の音に過剰反応し、苦痛のあまり耳をふさぐ。その場にいられないことも。 食器が触れ合う音や人ごみの声、救急車のサイレンなどに過敏。 なのに耳元で大声で呼んでも反応しないこともある。 |
視覚 | 特定の光や色が苦手。太陽光のギラつきや蛍光灯、看板のネオンなど。 カメラのフラッシュが刺さってくるように感じて目が開けられないことも。 逆にタイヤなど反射して回転しているものをずっと見続けてしまうパターンもある。 |
味覚 | 口の中の感覚が過敏なため、特定の食べ物が食べられない。 ネバネバ、カリカリなど特定の触感や、金属製のスプーンの金属の味が嫌、など。 刺激物に弱く、ミント系の飴や歯磨き粉が苦手なことがある。 味が変わると敏感に反応するため、決まったものをずっと食べ続ける。 |
痛みに鈍感なパターンもあり、ケガに気がつかずに血だらけで平然としていることや、
温度感覚が鈍いと冷房をきかせすぎたり、真夏に厚着をしていたりすることもあります。
医師が語るHSPと自閉スペクトラムの違い
HSPの臨床医である長沼睦雄氏は、著書『子どもの敏感さに困ったら読む本』でこう明言されています。
自閉スペクトラム症の場合は、社会的なものごとに対する理解の鈍さがあります。一方、HSC※やHSPは社会的な理解がとんでもなくいい。共感力が高いのです。そこが決定的に違います。
『子どもの敏感さに困ったら読む本』より引用
※HSCは子どものHSPのこと。「Highly Sensitive Child」の略
自閉スペクトラムの場合は、抽象的な表現や文脈を読むことが苦手なため、意図せず相手を怒らせてしまうことがあります。
思ったことが口に出てしまうため、敬語がうまく使えなかったり上から目線な発言をしてしまうのです。
それに対しHSPは空気を読みすぎるほど周囲に気を遣い、「相手が何をして欲しいか」顔色を伺ってしまいますので、この点は大きな違いでしょう。
- 自閉スペクトラムは感覚過敏の反応に偏りがあることが多く、鈍感さや敏感さがある。
- HSPは「鈍感さ」には該当しない。
- 共感性の強さがあるのがHSP、ないのが自閉スペクトラム
私自身、HSPですが上記の「自閉スペクトラム(ASD)の場合」にあてはまるものが数多くありました。
ただ、反応がそこまで極端ではないな、と感じます。
嫌だけれどもできなくはない、我慢すればやりすごせる、程度の苦しさですので、そういった反応の過剰さも違いのひとつかと個人的に思います。
注意欠陥多動性障害(ADHD)との違い
注意欠陥多動性障害(ADHD)は「不注意」「多動性」「衝動性」といった症状が特徴としてみられます。
HSPの中でも衝動的に行動に移してしまう好奇心旺盛なHSP/HSSのアクティブさと混同されることがあるようです。
また、HSPはささいなことにも敏感に反応してしまうため、気が散りやすいという面がありますが、その点が「注意力散漫」と思われてしまうのかもしれません。
注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴
不注意 (気が散ってしまう) | 多動性 (じっとしていられない) | 衝動性 (思いついたらすぐ行動してしまう) |
・仕事などでケアレスミスをする ・忘れもの、なくしものが多い ・約束や期日を守れない、間に合わない ・時間管理が苦手 ・仕事や作業を順序立てて行うことが苦手 ・片付けるのが苦手 | ・落ち着かない感じ ・貧乏ゆすりなど、目的のない動き | ・思ったことをすぐに口にしてしまう ・衝動買いをしてしまう |
大人のためのADHD.co.jp より引用
いかがでしたか? HSPのあなたは該当するものがありましたか?
上記の表でいえば、不注意の部分に該当するものがいくつかあったのではないでしょうか?
HSPとADHDは正反対
注意欠陥多動性障害(ADHD)の不注意な部分は、HSPの特徴と重なる部分があるかと思います。
しかしHSPの場合は常に不注意なのではなく、急な予定変更や急かされたために焦ってしまい、パニックを起こして注意力が散漫になるのです。
また、マルチタスク(複数の仕事)がうまく処理できない点もHSPの特徴としてよく挙げられますが、これは逆に作業中にもかかわらず、やるべきこと以外の細かい点にも次から次へと気が付いてしまい、気がそれてしまうのです。
HSPの提唱者であるエレイン・N・アーロン博士はこう述べています。
―ADHDを持っている方は、特徴的な遺伝子、行動、そして診断する上で基準となるような症状を持っています。
仮にそれをすることで自分にとって望ましくないような結果がまっていようとも、それによって衝動を抑えることが難しい。
それに対して、HSPは行動を起こす前に“一旦立ち止まり考える”傾向を持っています。
また行動している最中も、起こっているプロセスについて深く考えるので、とても良心的な行動をとることになります。
~エレイン・N・アーロン博士の日本語版サイトより引用~
HSPが仕事や作業に時間がかかってしまう点も、ミスをしないように慎重に確認しながら進めるために遅くなってしまうのです。
静かな環境で自分のペースで作業が進められれば集中してていねいにやり遂げられますので、条件さえ整えば問題はないはずです。
- HSPは物事を深く処理をする特徴があるため、考えてから行動する。
注意欠陥多動性障害は思いついたらすぐ行動してしまう。 - HSPは静かな場所でひとり集中するのが好き。
じっとしていられないのが注意欠陥多動性障害。
注意欠陥多動性障害(ADHD)かどうかチェック!
もしかして注意欠陥多動性障害(ADHD)ではないか、と思った方はこちらの
チェックリストに答えていくとある程度、症状の有無を確認することができます。
※このチェックリストは、お医者さんに相談する際に、症状を的確に伝えるためのシートです。診断結果を表すものではありません。
双極性障害との違い
双極性障害とは
双極性障害は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつです。うつ状態だけが起こる病気を「うつ病」といいますが、このうつ病とほとんど同じうつ状態に加え、うつ状態とは対極の躁状態も現れ、これらをくりかえす、慢性の病気です。
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」より引用
両極端な病状が起こるのが特徴的で、昔は「躁うつ病」と呼ばれていました。
躁状態になるとハイになり、気分が高揚して睡眠をとらなくても平気になります。
深夜でもかまわず電話をかけまくったり、知らない人と軽快に話したり、普段よりもおしゃべりになります。
また、気力が増しアイデアが次々と浮かんでくるため、勢いにまかせて会社を設立したり、株取引を始めたりと突発的な行動に出てしまいます。
その反面、うつ状態になると、憂うつで沈んだ気持ちになり、あらゆることに興味や関心がなくなり、楽しんでいたことも楽しめず非活動的になります。
悪化すると妄想が起こることもあり、自殺願望がでてきてしまうこともあります。
HSP/HSSはHSPでもありますから、普段はどちらかというと引っ込み事案で、控えめなタイプです。
ただ、興味を持ったことには急に活発になり、大胆な行動を起こすことがあるため、そこが双極性障害の二面性と似ていると受け取られてしまうのかもしれません。
HSP/HSSは双極性障害の躁状態ほど極端な行動にはでない
いくら興奮しているからといって、HSP/HSSは双極性障害の躁状態ほど極端な行動にはでません。
双極性障害になると結果が明らかなことにも無謀に飛びこんで行動してしまう点があります。
そのため、怪我をしてしまったり、他人を傷つけてしまったり、社会的に信用を失ったり、浪費してしまうなど、本人や家族が不利益を被ることになってしまうことが多々起こります。
これは、病気だからこそ起こる症状であり、いくら突発的な行動だからといって同一視するには無理があると言えるでしょう。
こんなときは専門医を受診して
HSPの繊細さは感覚的に感じ取るものが多いため、一概にある一定のラインを越えたらHSP、と判定されるわけではありません。
あまりにも自分の繊細さに振り回されて日常生活に支障をきたしているのなら。
また、発達障害かもしれない、とご自身で思いあたる節があるならば。
一度、専門医の診断を受けてみてはいかがでしょうか?
大切なのは、HSPでも、発達障害でも、障害があっても、あなたが自分らしく快適な生活を送ることです。
手に負えないほどの困難に直面しているのならば、適切な治療が必要です。
ひとりで苦しんで我慢をし続けないで、必要な支援を受けてください。